
東京都内でカモメの仲間であるウミネコによる騒音、糞害が問題となっている。被害が大きいのは特に繁殖期の4月から8月にかけてで、大群で飛来し、都心の建物の屋上に営巣する。その鳴き声は「ニャーニャー」と猫に似ていることからこの名が付いた。ウミネコの飛来地区のひとつ、東京都墨田区に住む小竹保雄さん(68)は「住民みんな迷惑しているよ」と語った。このウミネコ問題は、1つの建物がウミネコ対策を行っても、隣の建物に移って営巣されてしまうため、地域全体としては騒音などの問題が解決されない点にある。小竹さんや専門業者は「地域全体で対策をする必要がある」と指摘する。墨田区の南隣で東京湾に近く、ウミネコ被害に悩まされる江東区の担当者は「営巣されないためにも建物の管理者が定期的に巡回・点検してほしい」と語った。

「みんな迷惑しているよ」
こう話すのは、現在もウミネコの被害に遭っている小竹保雄さんだ。小竹さんは隅田川に近い墨田区千歳に11年住んでいるが、毎年3月から7月まで続くウミネコの騒音・糞害に頭を悩ませている。ウミネコの飛来時期になると毎朝4時頃からウミネコ特有の「ニャーニャー」という鳴き声が聞こえてくる。また糞や羽が散乱することでベランダが一面、真っ白になることがあるという。
こうした被害を踏まえて、小竹さんの住むマンションでは業者に依頼して屋上にテグス(釣り糸)を張る対策を施した。その結果、マンションの屋上にウミネコが営巣することがなくなり、被害はやや減少したという。しかし、ウミネコは周囲のマンションに移り住んだだけで、地域全体としての被害は減っていない現状だ。
この現状に対して小竹さんは「1つのマンションが対策をしてもほとんど意味はなく、周りのマンションと一緒に対策しないと被害は減らない」と語る。さらに「町全体がこれだけ被害に遭っているので、行政が主導してもっとウミネコ対策に乗り出してほしい」と強く語った。

鳥害対策を手がける株式会社日本鳩対策センターの原田好二さんも「対策は地域全体でやる必要がある」と語る。日本鳩対策センターの対策工事には、屋上をネットで覆う方法や、電気ショックを設置する方法などがある。規模にもよるが、いずれの工事も費用は平均して数十万円から数百万円だという。こうした負担を軽減するため、墨田区などの行政は対策工事に補助金を支給する。原田さんはこの施策に、「ウミネコ被害の軽減に直結する」と話す。
しかし、現状では各々のマンションが個別で対策を行っているので、地域全体としては騒音の被害が解決されていない。根本的にウミネコの被害を減らすために「地域と行政がウミネコの習性を正しく理解した上で、一斉に対策に乗り出すことができれば解決する」と述べた。また「一般の方が自力でウミネコ対策をするのは、マンションからの落下やウミネコによる攻撃の危険性があるので、行政や専門業者に相談をしてほしい」と語った。
墨田区に隣接し、より深刻な被害にあっている東京都江東区環境保全課・環境美化係の担当者は「ウミネコ対策は行政の方でも支援はしているが、地域全体で問題を解決するためにも各々のマンションの管理者に対策をお願いしたい」と語った。

東京都におけるウミネコの被害は2013年ごろから顕著になり、それに伴い東京都は、「東京都鳥獣管理事業計画」の方針のもと各行政機関が対策に乗り出した。江東区は、ウミネコに関する情報をホームページやパンフレットで区民に提供したり、寄せられた相談に応じて、ウミネコ対策の専門業者を紹介したりしている。実際に、江東区では環境保全課の紹介により、2024年に入ってから、22件のウミネコ対策工事が実施されている。このような地道な活動を続けていった結果、2020年ごろまでは年間で200件近く寄せられていた相談が、2024年は12月24日現在で94件までに半減したという。
さらに「一度、営巣されてしまうと大変だ」と担当者は話す。実は、ウミネコに営巣されてしまうと鳥獣保護管理法によって専門業者以外は巣に触れることができなくなってしまうのだ。そのような事情を踏まえて、「とにかく建物の所有者や管理人が、定期的に屋上付近を巡回・点検して、営巣を防ぐことが地域全体のウミネコ被害の軽減につながる」と話し、事前の対策を呼びかけている。