2026年3月02日月曜日

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高齢者に「生きがい」と「居場所」を

シルバー人材センターが生む社会参加

課題は会員数の確保

 「楽しそうな感じになって明るくなった人はやっぱりいますね」。
 群馬県高崎市にある高崎市シルバー人材センターの事務局長補佐、須藤利明さんは、センターを利用している会員たちを振り返りながらそう話す。シルバー人材センターとは、都道府県知事から指定を受けた公益法人で、健康で働く意欲のある満60歳以上の高齢者に「働く場」を提供している組織である。
年々深刻化する少子高齢化のなかで、退職後も社会と関わり続けたいと考える高齢者は少なくない。シルバー人材センターは、働く機会とともに、人とのつながりや居場所を提供する場として、その役割を広げている。

高齢者の「サードキャリア」を支援

 高崎駅から車で7分ほどの住宅地の一角に、高崎市シルバー人材センターはある。建物の鮮やかな青色と、「60歳を過ぎたら一緒に働きませんか?」と書かれた大きな文字が目立つここには、2024年度末の段階で1800人以上の高齢者が会員として登録しており、その平均年齢は約75歳。同センターの須藤さんによると、60代で定年退職した後、ハローワークを経由して再就職し、数年間働いたのちに「サードキャリア」としてセンターを利用する会員が多いのだという。そのため、会員登録にあたってはハローワークとの連携による紹介が大きな役割を果たしているほか、会員の口コミや、年に一度の市内全世帯への会員募集チラシ回覧なども、同センターの1800人を超える会員数につながっている。

高崎市シルバー人材センターの事務局長補佐、須藤利明さん(2025年11月17日午後4時40分、群馬県高崎市江木町の高崎市シルバー人材センター)松本真子撮影

 会員の多くは、週平均20時間弱就労しており、最大で月80時間まで就労することができる。仕事内容は、工場内の軽作業やスーパーの調理補助、公園清掃、樹木剪定など多岐にわたり、これらは本人の希望に加え、働ける日程や時間、家からの距離間などを考慮した上で一人ひとりに紹介される。その後研修期間を経て、会員本人が「続けられそう」と判断した場合に、正式に配属される仕組みとなっている。須藤さんによると、こうして実際に働いている会員たちの仕事ぶりは熱心だという。「皆さん最後の仕事だと思って入ってきて仕事してくれているので、一生懸命なんですよね」と須藤さんは話す。

 センター入り口付近の棚には、様々な工具や仕事で用いる材料などが備えられており、センターが取り扱っている仕事の豊富さや、多くの会員が日常的にセンターを利用していることを再確認できる。

動機は「生きがい・社会参加」

 同センターが行った入会動機調査によると、会員の入会動機として最も多いのが「生きがい・社会参加」であり、次いで「経済的理由」、「健康維持・増進」、「時間的余裕」、「仲間づくり」と続く。「生きがい・社会参加」や「仲間づくり」が「経済的理由」とともに入会動機として大きく挙げられていることについて須藤さんは、「昔はやっぱり金銭的な理由がすごく大きかったんですけど、この10年くらいでだいぶ変わりましたね。『家にいるとだめになっちゃう』という人が増えました」と話す。また、「健康維持・増進」についても「規則正しい生活とか生活のリズムが作れるのはものすごくメリットが大きい」と、心身への効果を強調した。

高崎市内に配布されたシルバー人材センターの会員募集チラシ(2026年2月10日午後3時17分、高崎市内)松本真子撮影

 シルバー人材センターでは、会員同士の交流の場も積極的に設けられている。希望する会員が自主的に運営・参加することのできるサークル活動や、センター内で定期的に語らいの場として開かれるシルバーサロンなどがそれにあたる。
「70過ぎて友達ができるって、しかも弱ってないでしょ、元気でしょ。やっぱり家族以外のつながりって必要なんだなって感じます」という須藤さんの言葉からは、シルバー人材センターが高齢者の生きがいや仲間同士の交流において重要な役割を果たしていることがうかがえる。

信頼が結ぶ職員と会員

 須藤さんは、自分たちセンター職員についても「『センターの方から言われたならやってみよう』と(会員に)思ってもらえるような信頼関係を作ることが職員の仕事なのかな」と話す。センターと会員は雇用関係で結ばれているわけではないため、仕事を提供したり、その仕事に熱心に取り組んでもらったりする上で、信頼関係が欠かせない。中にはセンターに長く在籍するうちに軽口をたたくほど職員と親しくなる会員もおり、そうした会員たちとのやり取りが、須藤さんがセンターで活動する上でのやりがいの一つにもなっている。

 須藤さんは、感謝の言葉とともにセンターを退会する会員たちについて、次のように語る。
「やめるときに感謝されるのはちょっと寂しい気持ちもありますけど、『本当に長いこと仕事させてくれてありがとうね』なんていうふうに言われるとやっぱりこの仕事は面白いなと思いますね」。

社会とのつながり 仕事とサークル通じて継続

会員の一人で、市営駐輪場の管理人とウクレレサークルの主催者を務める田口栄さん(2025年11月17日午後4時35分、群馬県高崎市江木町の高崎市シルバー人材センター)松本真子撮影

 高崎市シルバー人材センターを利用している会員の一人に、田口栄さん(72)がいる。田口さんは65歳で定年退職した後、すぐにセンターに入会し、現在は市営駐輪場の管理人として月10回ほど働いている。「(定年退職後も)社会とのつながりを継続して作りたいなって思って早めに仕事を見つけた」といい、実際に働く中で、様々な人とコミュニケーションを取れたり、そこで得た収入で好きなことを楽しめたりすることにやりがいを感じているという。

 また、田口さんは同センターのウクレレサークルの主催者でもある。「仕事だけじゃなくて、サークルをやりながら仲間もできますね。楽しいですよ。仕事以外にもそういう環境ができましたから」と、充実した表情で話す。

会員減少という壁 求められるセンターの役割とは

会員数の減少について話す群馬県シルバー人材センター連合会の加藤透さん(2026年1月14日午後3時20分、zoom)松本真子撮影

 一方で、シルバー人材センターには課題もある。
 群馬県内の各市町村のシルバー人材センターに対し、運営に関する助言や指導を行う群馬県シルバー人材センター連合会の加藤透さん(44)によると、最大の課題は会員数の確保だという。県内には約8800人が登録しているが、全国的には減少傾向が続いている。その背景として、継続雇用制度の影響がある。70歳まで就業の機会が確保されたことにより、より高い年齢まで企業で働き続ける高齢者が多くなったのだ。
 さらに、新型コロナウイルスの影響も大きく、感染の心配からセンターの会員数は一時大きく落ち込んだ。加藤さんは「コロナで(会員の数が)がくっと落ちて、今では少しずつ戻ってきてはいるのですが、まだまだコロナ前ほどには戻っていないというのが実情です」と話す。

 人材不足が進む中、シルバー人材への需要は高まる一方だ。
 「高年齢になった方も、働けなくなったからやめるのではなくて、居場所として(利用してもらう機会を)残したい」。加藤さんはそう話し、「高齢者の居場所」としてのシルバー人材センターの役割を今後も強めていく姿勢を見せた。