ホーム大学新歓ビラ散乱、環境サークル奔走

新歓ビラ散乱、環境サークル奔走

「大学の清掃係か」自問も

人々のマインド変容カギと識者

 「地獄絵図だ」「せっかくの初日なのに」。そう呟く新入生たちが行き交った、昨年の4月初め。サークル活動が盛んに行われる早稲田大学の構内で、新歓活動の一環で例年通りビラ配りが行われたが、地面には多くのビラが落ち、折からの雨でドロドロに崩れて路面を覆っていた。そんな状態に対して解決のアプローチを試みる学生たちがいた。

当たり前になっている「ビラ配り」と「ビラ拾い」

雨の中、踏まれてドロドロになったビラが路面を覆う早稲田大学8号館前(2025年4月1日、東京都新宿区西早稲田)鈴木萌奈撮影

 2025年度の早稲田大学の新歓活動は4月1〜4日にかけて行われた。その4日間ともビラの回収をしていた「環境ロドリゲス」というサークルがある。幹事長の伊藤優真さん(創造理工学部3年)によると、元々はボランティアとして自発的に行っていた独自の活動だったものの、その活動の効果があってか、近年は大学の学生生活課から「今年もお願いします」と依頼の声がかかるようになったという。

 だが、例年通りにいかなかったのが2025年のビラ回収だった。大雨に見舞われたことでビラが濡れて破れ、形状を保たなくなり、そのまま学生たちに踏まれてドロドロになってしまった。このことにより、例年に比べ主体的にビラを拾う学生が減ったり、ビラが水の重さを含んで運びづらくなったりするというデメリットが生じていたのだ。前年は拾われたビラを入れるビラ回収ブースが設けられたが、今年は大雨で規模を縮小せざるを得なかったという。「『これいらないので』と渡してくる人はいたけど、『拾いました』と言う人はいなかった」

 自分たちで学校全体のビラ回収を担っているからこそ、その作業の大変さを知り、自分たちロドリゲスが配るビラについても細心の注意を払っていたと言う。「自分たちの広報活動であるビラ配りと、ボランティア活動であるビラ拾いの兼ね合いが難しかった」。ゴミ拾いをしていてえらい団体という認識だけで終わるのは寂しいと語るサークル員もいるそうだ。「ビラ拾いを糸口にして、他人事として捉えるのではなくボランティアに興味を持ってくれたら」と伊藤さんは語った。

大学との連携 「清掃係」になっているのか

「環境ロドリゲス」で幹事長を務める創造理工学部3年の伊藤優真さん(2025年6月12日16時53分、東京都新宿区西早稲田)鈴木萌奈撮影

 初日の新歓が終わってから学生生活課との話し合いが行われ、全学生に向けた一斉送信のGmailで注意喚起をするという対策が取られた。このように現状が問題として学校側に受け入れられたものの、来年以降の具体的な解決策の提示がなく、あまり感触は良くなかったという。「ロドリゲスが清掃係のようにいいように使われているみたいな、そういう立ち位置になってきているのではないか」。伊藤さんはそのように不安を吐露した。元々2025年度は他のサークルが一緒にビラ拾いに取り組んでくれるという話も浮上していたが、雨でその話も消えてしまった。2024年度はGmailで「ロドリゲスが活動しているので皆さんも手伝ってください」といった趣旨の発信が全学生向けにあったのに対し、2025年はその対象が公認サークルの幹事長のみに限定されていた。そのことも新歓初日後の話し合いで大学側に「もっと皆に伝えるべきでは?」と意見を伝えたところ、「(2026年度は)今年以上のことはやります」という返答が返ってきたという。

 「来年のことは未定だけど、仕事を引き受ける以上、見返りはちゃんと求めなきゃいけない。ロドリゲスの名前と清掃活動に協力していること、この2点を全体に発信していただきたい、と伝えようと思う」。また、大学側の協力が必要にはなるものの、晴天時と雨天時のビラ回収方法を区別して対策することも天候による場合を分けての対策についても前向きに検討しているという。

回収したビラの数値化も行っている。例年は枚数で数えるが、今年はビラが溶けてしまったため、重さで計測した。(2025年6月12日17時01分、東京都新宿区西早稲田)鈴木萌奈撮影

 大学がロドリゲスの要望を受けてどうするかを紺碧Timesは学生生活課に問い合わせたところ、具体的な対応内容には踏み込まず、「大学からサークルに対し何らかの企画を持ちかけることは多くありません。一方、サークル側から協力の相談があった際は、学生の成長に資する場合と、サークル外にも好影響がある場合は大学が後援しています」と答えた。

「上からのアプローチ」の廃止

 ゴミ問題に大学と学生はどういう関係で関われるのか。千葉市と協力してゴミのポイ捨て問題に取り組んだ調査経験のある千葉大学の植田憲教授は「行政が上からコントロールしていくというより、人々が変えていくというように、ゴミ問題のアプローチというのは『結局人々の問題だよね』――そういうマインドから始まった動きです。根本として生活者が自らの景観や生活環境をより良いものにしていくことが願望としてあるので、行政とは違う視点で取り組むという意味ではそれなりに意義があったと思います」と語る。

 何を施策として行うかという行政の行為に目を向けるのではなく、そこで生きる人へと視線を移す必要があるという。

 実際、植田教授らが行った街頭でのポイ捨て調査の最中には、見知らぬ人に悪態をつかれた経験もあるという。そんなポイ捨てが頻発する街での、公園に捨てられたごみの分布や置き捨てを記録する調査を通じ、施策だけでは解決できないゴミ問題の核が見えてきた。それは人々のマインドだという。「マインドを変えていくのは本当に難しいが、 100人いて1人変わるのは結構大きなことです。割合としては少ないし単純計算ですが、毎日1人ずつ変わっていったらいつかは0になる。ポイ捨てをしてしまう人々も 10年後は『あそこで注意書きを見たな』『あんな仕掛けがあったな』と反省していく可能性もある。今日の『コスパ』『タイパ』とはまさに真逆ですが地道ながらもやっていくべきことかな、と」

千葉大学の植田憲教授(2026年2月17日11時42分、Zoom会議)鈴木萌奈撮影

 また、ポイ捨てや分別問題はコロナ禍に顕著になった可能性があると植田教授は述べた。「美化活動できない時間を経て、やらなくていいものという認識を持った人が多くなり、それがある種の文化のようになってしまっているとすら感じる」。コロナ禍という空白の期間があったことによって、周りの環境に対する意識が欠落してしまった可能性もうかがわせる。

 早稲田の環境サークル内でも、コロナ禍前後で引継ぎできていなかった部分があったという。コロナ禍は実は後を引いて学内外の環境に影響を及ぼしているのかもしれない。

改善のキーワードは「人」

 「人間の特性が関係するかもしれないです。人目のつかない、管理していないなという場所はやっぱり捨てられやすい。お花があることが抑制に影響があるというわけではなく、お花を日々管理している人々の姿を認めることに意味がある。そんなアプローチを実験的にやってみるというのも、一つの策なのかもしれない 」。花があるからでなく、その背後にいる人の存在が大きいとも、植田教授は触れた。

 2026年の新歓シーズンを控え、環境ロドリゲスは早稲田新歓公式Instagramで次のような文章を添えた投稿をしている。

 「この課題は一団体だけで解決できる規模ではありません。まだ参加していない公認サークルの皆様、一緒に「きれいなわせだ」を作りませんか」