2025年4月27日日曜日

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高田馬場ロータリー、ごみと闘う学生団体

清掃ボランティア週5日

ポイ捨て、散乱の日常 問題知らせたい

植え込みにまで広がるごみ (2024年10月16日午後10時15分、東京都新宿区の高田馬場駅前ロータリー)松本倖河撮影

 「うるさくて、汚くて、タバコ臭い」。早稲田大学教育学部3年の古見優太さんは高田馬場駅前ロータリー広場についてこう話す。「ロタ」とも呼ばれるこの場所は、学生街である高田馬場の「顔」として、早大生にはもちろん地域住民にも親しまれている場所だ。しかしロータリーにはごみが溢れかえり、その光景が「日常」と化してしまっている現実がある。その日常を変えるため、日々奮闘する学生団体の姿がある。

「ごみを捨ててもいい場所」。蔓延する風潮

 実際にロータリーを訪れた7月5日午後10時ごろ。広場の中心部には、飲み終わり潰されたストロング缶や飲みかけで放置されたビール缶が無造作に捨てられているほか、タバコの吸い殻が100本以上までもが撒き散らされていた。散乱ごみは広場の外周部の植え込みにまでも無秩序に広がる。こうしたごみで溢れるロータリーに大学生グループやアジア系外国人の人たち、スーツ姿の若い男女などが集まっており、散乱するごみに気を留めることなく賑わいを見せていた。このような人々の中に路上喫煙やごみのポイ捨てを行っている人もおり、記者がいた20分間に少なくとも20人以上の人がこうしたマナー違反を行っていた。中にはウイスキーの角瓶を一気に飲み干すと同時に植え込みに向かって投げ捨てる危険行為をする学生の姿も見られた。こうした独特の雰囲気をロータリーの美化活動に取り組む学生団体、「ロータリーの会」幹事長の平川花芽さんは、「高田馬場駅前ロータリーではゴミを捨ててもいいという風潮がある」と指摘する。

清掃活動を行う「ロータリーの会」幹事長の平川花芽さん(2024年7月5日午後10時40分、東京都新宿区の高田馬場駅前ロータリー)松本倖河撮影

清掃活動の真意「ごみ問題の認識を」

 「ロータリーの会」は早稲田大学の公認サークルで、ロータリーから散乱ごみをなくし、「きれいなロータリー」を街のシンボルとして未来へと受け継ぐことを活動理念として活動する。毎週月〜木曜日の午前8時からと金曜日の午後9時から清掃ボランティア活動を行っている。

 「単にロータリーを綺麗にする目的で行っているのではない」と平川さんはいう。「利用者の多い朝と夜間に、時間帯を変えながら清掃活動を行うことで、『ごみを拾う人』の存在を再認識してもらい、散乱ごみの存在を問題として自覚してもらうことを目的としている」。清掃活動で集めたごみは分別し、空き缶や吸い殻など種類ごとに集計し、毎日SNSで発信している。「ごみを集計し発信することで、毎日のごみの変化量を具体的な数値として可視化し、問題提起につなげていきたい」と話す。


ごみ問題解決へ、社会を巻き込んだ取り組み

ポイ捨て禁止を示すコーンの前に捨てられたごみ(2024年9月22日午後9時55分、東京都新宿区高田馬場駅前ロータリー)松本倖河撮影

 「ロータリーの会」が夜間清掃をしている最中にロータリーに居合わせた早稲田大学商学部2年の中野晃輔さんは「ロータリーを清掃することは本当にすごい活動だと思う。ただ、活動に対するモチベーションが分からない」と話す。清掃活動を見てもらうだけでは、ゴミであふれるロータリーの「日常」を重大な社会問題として認識してもらう道のりは険しいことをうかがわせる。

 そこで、「ロータリーの会」では、この現状を地域の課題として取り組んでもらおうと、地元自治体の新宿区をはじめ、地域コミュニティや企業、そして早大関係者に働きかけ、このごみ問題を共通の課題として捉え同じ目線に立って問題解決に取り組む協働企画に注力している。

 例えば新宿区立戸塚第二小学校での出張授業や協働清掃活動、高田馬場町会・銀座商店街といった地元の町内コミュニティと連携したPR活動、そして明治安田生命とのコラボ清掃活動がある。社会を巻き込んだ取り組みについて、平川さんは「私たちだけの取り組みには限界がある。広く知ってもらえるのはもちろんだが、高田馬場といった地域の方々に私たちやごみ問題について知ってもらうことで、地域一丸となって問題解決につなげられたら」と話す。

「ロータリーの会」へ壁を作らないで

ロータリーの会のメンバーたち(2024年5月、東京都新宿区の早稲田大学学生会館)ロータリーの会提供

平川さんは、「ロータリーのゴミ問題解決という目標に対して、色々な取り組みを行い、普段では接することがない様々な人と関われることが醍醐味。また、ある目標に全力で取り組むという面では普通のサークルと変わらない。意識高いボランティア集団として壁を感じるのではなく、気軽に声を掛けるなどしてもらい、より多くの人と取り組んでいけたら」と、他の学生とのつながりに期待している。