早稲田大学の「公認サークル」には、部室などの施設利用、活動補助金の制度などメリットが大きいが、一定人数の会員がいることが要件となる。逆に、公認であることが会員確保に直結するという関係でもあるだけに、公認サークルは新歓に力を注ぎ、その後も食事会などイベントを開いてミスマッチ対策に気を配る。一方、大人数で活発な活動をしながら、公認のメリットは感じられないとして非公認を貫く運動サークルもある。

新歓は着物体験
早稲田大学公認サークルである「わかものきもの会」は、着物や浴衣の着付けの練習会、着物を着て出かけるイベントなどを主な活動内容とする日本文化系サークル。本年度わかものきもの会の新歓担当を務める、早稲田大学社会科学部2年生の相原心織さん(20)によると、同会の新歓活動は、学生団体「Crich」が主催するオンライン合同新歓説明会や、新入生向けの着付け練習会、イベント体験、SNSでの活動内容発信、大学構内でのビラ配りなどからなる。わかものきもの会は無料会員と有料会員に分かれており、着物を着て出かけるなどのイベント活動は有料会員しか参加できず、会費は年3000円だ。活動は全て任意参加で、会員に最低参加日数の要件がなく、活動内容にもハードなことはないと相原さんは話す。サークル内のアンケートによると、2週間に1回の頻度で活動に参加する人が一番多かったという。

相原さんによると、わかものきもの会の昨年度の12月段階での会員数は有料無料合わせ約92人だったが、1月の代交代を行った後、本年度の新歓の前には約43人とほぼ半減した。4月から6月の新歓期間に、新入生が多数入って、また前年同期なみの人数に戻るのが毎年の状況だ。同会は入会条件がなく、とりあえず入り、それからかけもちしている別のサークル、いわゆる「兼サー」先の活動が忙しくなり、わかものきもの会にはだんだん来なくなる人が多いという。
「初めて来た人にも平等で」
新入生の勧誘方法について、「まず、有料会員のほうの部費がすごい安いよっていう話で、年3000円なので、日本文化系サークルの中ではだいぶお安めっていうのをアピールしつつ、あと無料会員から入って途中で有料会員に切り替えるっていうのがいつでも可能なので、とりあえず無料だから入ってみませんかっていうのを前面に押し出していくって感じ」と、相原さんは説明する。

昨年度までわかものきもの会の会計を担当していた、早稲田大学文学部3年生の水谷美乃莉さん(21)の話によると、新歓は新入生の数を増やすことが最重要であり、合わないかもと思う人にも同じように勧誘をする。
「(他のサークルが)ミスマッチだなって思った原因として、結構『身内のり』、あまりサークルに来てない人にはわからないような楽しみ方をしている人が多数いたのです。なので、着物会ではそういうことがないように、久しぶりに来た人であったり、初めて来た人であったりに対しても本当に平等に話を回したり楽しめるように意識しています」と、水谷さんは説明した。
また、わかものきもの会は本年度の6月より、活動の4割以上に参加する会員(有料・無料問わず)に対し、プレゼントをするという企画を実施している。
積極的にビラ渡す「力技」も
早稲田大学公認サークル「HAWAII PJ」は、ハワイ島の学校で日本文化を教えるボランティアサークルだ。本年度の幹事長を務める早稲田大学法学部3年生の宇野三愛さん(20)の説明によると、HAWAII PJの主な活動は、夏休みと春休みにそれぞれ一度ずつハワイ島に渡航し、現地の小学校で授業をすることだ。そのための準備として、渡航開始の約1ヶ月前から、現地でどんな授業をするかなどについて準備のミーティングをZoomで行う。
HAWAII PJは上下関係がなく、女性メンバーが多く、穏やかなサークルと宇野さんは説明する。
HAWAII PJの新歓は、InstagramなどのSNSでの宣伝やZoomによる説明会を実施したのに加え、WAVOC(早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター)が主催するボランティア・カフェの合同説明会などにも参加した。WAVOCは早稲田大学のボランティア団体を統括し、支援する早稲田大学の公式組織。「ボラカフェに来て、突っ立っている新入生に対して、こっちから積極的にビラを配りに行って、『うちの説明聞きに来てください』って言って勧誘して、結構いわゆる力技で人を集めた」と、宇野さんは説明する。説明会に参加した新入生は33人であり、20人が入会した。HAWAII PJの入会条件は、説明会への参加と2000円の年会費だ。
公認サークルとしての存続
HAWAII PJには昨年度新歓が終わった5月段階で21名の会員がいたが、そのうち実質的に活動をしているのは13人で、8人はいわゆる「幽霊部員」として籍を置くだけの状態だった。年度が替わって卒業生なども抜けると、新歓の前の会員数はわずか8人となった。早稲田大学公認サークルとして認められる条件の一つは、団体の早大生の人数が21人以上であることだ。
早稲田大学校友会のコラムによると、非公認を含め、早稲田大学には約3000以上のサークルがあるが、公認サークルとして認定されているサークルは約500だ。早稲田ウィークリーによると、公認サークルとして認められることには、いくつかのメリットがある。まず、部室や会議室などの大学の施設の利用申請ができ、新歓ブースも優先的に割り当てられる。また、早稲田大学学生補償制度(傷害補償)の適用を受けることができる。また、サークルの新歓や早稲田祭などの活動の一部に充てられる、最大30万円の課外活動補助金を申請することもできるという。今回話した3人とも、サークルにとって最も重要なのは、「早稲田大学公認サークル」として紹介することができ、新入生に安心感を与えることだという。
公認サークルの要件を満たすには、実質的な活動人数よりも在籍数がまず必要になるという切実な事情があり、一方、そのための新入生確保には、公認サークルになることが、大いに関係する。HAWAII PJはミスマッチの対策よりもまず差し迫った課題として、できるだけ新入生を獲得する方針で新歓を行ったという。その結果、本年度20名の新入生が入会し、28名の会員数となり、21人以上の条件を満たし、早稲田大学公認サークルとして存続することができた。
宇野さんによると、HAWAII PJでは、ミスマッチへの対策は入会後に行っており、会員に活動を続けてもらうため、さまざまな工夫をしているという。
「今年はたくさんの人にサークルに残ってもらいたいと考えているので、そのためにみんなが仲良くなれるようなイベントを開催したりするとか、お昼休みにみんなが集まってご飯食べる会を企画したりとかしようと思っています」と、宇野さんは説明する。
「僕らは勝ちにこだわっている」
早稲田大学の軟式野球サークル「まりの会」には、4学年合わせて約87人が所属している。内訳はプレーヤーがおよそ50人、マネージャーがおよそ40人。幹事長を務める早稲田大学社会科学部3年の藤波幸介さん(21)は、「一般的な野球サークルには、部活より少し楽で、遊びに近いイメージもあると思うが、僕らは勝ちにこだわっている」と話す。限られた週2回の練習の中で、いかに質を高めるかを意識しているという。

合宿は、新歓合宿やスノーボード合宿などを含め、年間約7回行う。中でも野球の大会を目的とした合宿では、2日間で4試合をこなすこともある。普段から大会にも積極的に参加し、優勝すればプロ野球球団が本拠地とする球場で試合ができる大会などを目標にしている。
これだけの人数と活動規模を持ちながら、まりの会は大学の公認サークルではない。藤波さんは、公認化していない理由の一つについて、「正直、手続き的な面で少し面倒くさいというところもある」と話す。
公認団体には人数の基準のほか、幹事長、副幹事長、会計などの役職を置くことなど、運営上の条件がある。まりの会にも幹事長などの役職は存在するが、公認化すればこれらは制約となる。そこまでする必要性を、現時点では強く感じていないという。藤波さんは、「正直そこまで絶対公認になったほうがいいなって思う場面は、結構割と少ない」と話す。
財政面での自立
非公認であることで、金銭面では不利な部分もある。まりの会には大学からの補助金がなく、活動費は基本的に自分たちで賄っている。サークル費は半期ごとに1人5000~6000円程度を集め、4年生からは徴収していない。集めた費用はグラウンド代などに使われる。大会や合宿では別途参加費も必要となり、藤波さんによると、大会参加時にはプレーヤーが約2万円、マネージャーが約1万8000円を負担することもあるという。バットやボールなど道具の費用は、一部をOBの支援で賄う。藤波さんは、現在の財政状況について、「今のところお金のやり取りで、そんなにサークル費がもうマジ本当に足らないみたいな(ことは)全くないんで」と話す。補助金を受けられることは公認化の大きなメリットだと認識しつつも、金銭面だけを理由に公認化する必要性は感じていない。
非公認で部室がないためバットやボール、キャッチャー用具などのチーム道具は、主に1年生の部員が練習のたびに持参し、終われば持ち帰るという。藤波さんも「部室は欲しい」と認めるが、「部室のためだけに公認サークルになる必要はない」と考えている。
まりの会の新歓では、「公認サークル」という肩書きが使えない分、別の魅力を前面に出している。メンバー全員が早稲田大学の学生である「オール早稲田」、野球部に近いデザインのユニフォーム、本格的に野球に取り組んでいることなどだ。
今年の新歓には約60~70人が参加し、そのうち約30人が入会した。新歓にかかる負担は小さくないが、結果的には多くの新入生を迎えることができた。
一方、「小中高と全く野球をしていない人が、大学から野球を始めるようなサークルではない」と、藤波さんは説明する。サークルの活動方針や競技レベルに合わないと考えられる新入生に対して、無理に入会を勧めることはせず、場合によっては他のサークルを紹介することもあり、入会後にサークルが合わないと感じた場合、引き止めることはあるものの、最終的には本人の意思を尊重しているという。
50人ほどのプレーヤーがいれば、試合に出られない人も出てくるため、藤波さんは、「自分が試合に出ていなくても、チームをしっかり応援できる人に来てほしい」と話す。
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